銀盤の国のお姫様
 足をおろして、また滑り出す。

 夢から覚めたようで、しっかり目を開いている。

 いや大きな目から何かを訴えている。

 何か、あったのだろうか。

 何かに脅えているよう。

 顔を強張らせ、体を縮ませるように滑っている。

 またまた、怪しい感じがする最初のメロディーに戻っているからか、悪者に付け狙われたのか。

 あれこれ考えてた瞬間——

 右足で左回りのキャメルスピン。
 そこからしゃがんだ状態から、左足を真っ直ぐ真横に出し、体をひねって回る、ブロークン。

 足を替えて、今度は右足を氷と平行になるようにまっすぐ伸ばし、足を強く抱き締めるような格好で回るキャノンボール。
 三回転まわってから起き上がり、顔の正面で右足をつかむI字スピン。

 あまりにも速すぎて、もう目が回る。それに釣られて体も回りそう。

 華音有が白いもやに包まれて、消えてしまいそうな足替えコンビネーションスピン。レベル4だと基礎点は3.5。

 少しゆっくりめに一周回してから、最後のポーズ。

 一、二、三。

 あれ、動かない。いつもだったら、三秒止まってからお辞儀するはずなのに、両手を上げ、顔を上げて天井を見つめたまま動かない。

 何を見て、何を思っているだろうか。

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