銀盤の国のお姫様
　あのあと、世崎夫妻やリンクの所長らの尽力により、２００６年３月末までに建て替え費用の一部を民間から集めることを条件に、市から存続が認められた。

　その額は一億円。

　一億を集めるために、陽一や、中津アイスリンクを拠点に練習していて、のちにトリノ五輪で金メダリストとなった最中初音（ﾓﾅｶﾊﾂﾈ）自ら先頭になって、駅の前で募金活動した。華音有も箱を持って、声が枯れるまで募金を呼び掛けた。

　さらに八月に中津アイスリンクで、チャリティーアイスショーを開くことになった。

　出演者は陽一、初音のほか、当時高校生だった飛田うさぎら有名選手の他、華音有らリンクのスケート教室に通う子供たち。

　華音有は小学四年生ながら、たくさんのお客さんの前で、試合と同じように一人で演技することになった。

　ただ、たくさんのお客さんの前で演じられるか、疑問視されていた。

　小学三年生の時に、新人発掘合宿で才能が認められ、本来なら年齢制限で出られないが特別に全国ノービスＢ選手権に出たという経歴がある。
　それでも、疑問視されていたが、出ることが決まった。


　本人はそんな声にお構いなし。

　新人発掘合宿などで忙しかったが、一生懸命練習していた。
　ものすごいやる気で満ち溢れていた。

　すべては、大好きなリンクを、大好きなスケートを続けるため。



　
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