銀盤の国のお姫様
 いよいよチャリティーアイスショー当日。

 会場には沢山のお客さんが集まっている。
 2006年頃、このアイスショーが開催された頃、女子では世界初、国際スケート連盟公認の公式大会で四回転ジャンプに成功したうさぎに注目が集まっていた。あと彼女は、天性の純粋さから日本中から愛される人気者だった。

 そんなうさぎが出る訳だから、お陰様で大盛況。

「すごいお客さん・・・。」

 舞台ならぬ、リンクの裾でお客さんの様子を見ていた華音有が思わず驚いてた。


 くるりと回れ右に回り、お客さんに背を向けてロッカー室に向かう。

 いつもより足取りが重そうに見えたと、華音有の傍で見守ってた彼女の母が言ってた。

 練習のあとよりも重たそうにベンチに座った。

 真顔で床を見つめ、何を思っていたのだろう。

 あの日珍しく自分の感情を出したことを後悔しているのか。こうなってしまうなら、大人しくスケートをやめると言えば良かったのか。
 気持ちはあくまでも推測だが、本番前暗い気持ちになったのは事実だ。

 周りの女の子たちが、

「うさちゃん(うさぎ)の四回転見たいな。」

「陽兄の四回転も見たい!」

 と、わくわくしながら自分たちの出番を待っている中で、華音有が浮いて見えた。
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