銀盤の国のお姫様
 私は写真をテーブルに置いた。

 天井を仰ぎ、あの映像をこれ以上思い出すか、否か。
 頭が勝手に再生ボタンを押そうとする。押そう、やめて、押そう、やめて、あっ、押しちゃった。


 子供たちの踊りが終わり、リンクの隅に左右二手に散らばって待機。
 そして、華音有を除いたソロ演技をする人が一人ずつ登場する。

 基一が選手を引退してコーチに転身してから二十年も経っているのに、選手顔負けのスケーティングを披露。ジャンプはさすがに今はシングルアクセルまでだ。現役時代、練習ではトリプルアクセルに成功していた。

 和歌子は選手顔負けの美しいスパイラルを披露。

 観客からの拍手に包まれる。


 次々とソロ演技者が登場する中、華音有は和歌子に声かけられていた。
 
 当時、華音有は世崎夫妻に師事してないのに。

 映像からでは、何を言っているのか分からないが、本人たちに直接聞くと、

「かおちゃん、今練習しているあれ、今やってみな。」

 と和歌子は言ったらしい。

 それを聞いた華音有が、あまりにも唐突過ぎて無表情になっている。
 そんな話、事前に聞いていない。
 そうしているうちに、うさぎが登場。

 スパイラルや軽くステップをしながら、リンクを二周滑る。

 
 
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