-The Real Me-

『ダイ.イング.メッセージ…ハンニンハワタシ……？』

　そこから中条の声は耳に入ってこなかった。

「吉野？　大丈夫か、吉野…」

「あ、うん…。ご、ごめん、疲れてるから休むね」


　部屋に戻り、洗面所で嘔吐を繰り返す少女。

「い、いや、いや…怖い……分からない、もういやぁぁ―――っ」

　気づくと少女はありったけの処方された薬の粒を噛み砕いていた。
　数分も経たない内に、大量のアルコールを一気に飲み干した時のように身体はバランスを失い、視界は濁り少女は仰向けに倒れた。


「大丈夫…私が助けてあげる」

　暗い闇に迷い込んだように薄れゆく意識の中、微かに声が聞こえた。



　少女の家からの帰り道、中条は歩きながら先程のセリフを思い返していた。

『ダイ.イング.メッセージかぁ…ちょっと嘘くさかったかなぁ。捜査協力はなかったよなぁ。でも、アレで少しでも元気になってくれたらいいけど…』

　父を亡くし、クラスメートが３人も殺害された少女の“死”に対する恐怖を少しでも取り除きたい、という中条のデタラメなセリフだった。優しさであった。

　少し照れ笑いを浮かべた瞬間だった。
　足元に影が。辺りの空気は一転し、突如背中を刺すような緊張感が。