-The Real Me-

「吉野さん…お母さんは、お元気ですか？」

「え…あ、いえ、父が亡くなってからは働き詰で…」

「…そうですか。では、最近いつ話しをしましたか？」

「いつ？ ほぼ、毎日している…気はしますけど……」

　これはなんの為の質問なんだろう。医師の質問に戸惑う少女。

「父さん、一体何を聞いて――」
　中条が聞き終わる前に、医師は最後の質問をした。

「では…最後にお母さんの姿をみたのはいつですか？」

『い、いつ見たか？…何を言っているの……』少女は質問の意図が理解出来なかった。


「吉野さん……あなたのお母さんは半年前に亡くなってます」


　その言葉に二人は耳を疑った。

「わ、悪い冗談は止めて下さい……だって毎日仕事行って…朝ごはんも……お父さんがいる頃はドライブや遊園地にも……」

　少女は少し怒った口調で強く否定した。


「確かにそうみたいですね…ただし、お父さんと二人でね」

　怯える少女に医師は続けた。

「以前あなたはうちに入院していたのを覚えていますか？」

「私が、入院…い、いえ……」

「でしょうね…。当時あたなはひどいＰＴＳＤ(心的外傷後ストレス障害)に苦しんでいました」

「ＰＴＳＤ……」

「そう、そしてその時に負った精神的ダメージは余りに大きく、あなたはお母さんが亡くなった事実を受け入れる事が出来なくなった…今でも」

「…違う……う、嘘よ………」

「…そしてその耐えがたい状況からの脱出手段として、あなたの細胞はある事を発動させた」

「…………」

「それが自分の中に“母親”の人格を造り出すことだった」