-The Real Me-
-薬-
 《半年前~》



 私が最初に君と対面したのは、人格が“母親”の時の君だった。


「もし、このまま薬を飲み続ければ私…治るんですよね……」

「はい、順調に回復していますよ」

「そうですか……」
しかし彼女は何故かとても悲しそうな顔をしていた。

「…どうしました?」

「だって…この治療が成功すれば……私消えちゃうんですよね」

「そ…それは……!?」


 言葉がなかった…。依頼主であるお父さんの想いとしては当然“娘”としてのあなたの元気な姿が見たい。

 なんとも残酷な話しだ。偶発的とは言え、自らを守る為にこの世に生み出されて、今度は治療の為と、消される。

「そしたらもう、先生とも会えないんですよね……」

「…ああ」

「私…死にたくない……死にたくないよぉー、先生ぇ――――」


 そして、治療は中断された。しばらく様子をみようと、お父さんともよく話し合った結論だった。

 彼女自身、自分でもどうしたらいいか分からなかったんだと思う…。

 何故自分は生まれたか。何故自分は死ななければならないのか……。
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