-The Real Me-

　お父さんが君を残し、突然自殺するなんてとても信じられなかった。
　いや、自殺などするはずが無い。私には確信があった。となれば…。

　浮かび上がる疑惑を確かめずにはいられなかった。しかし、私の質問に彼女は恐ろしい程冷静に答えた…。



「まさか…旦那さんが亡くなったのは……」

「フフフ、あっという間でしたよ。娘の泣き叫ぶ顔が浮かびます」

「あぁ…お借りした薬、近いうちにお返しに伺いますよ。“ブロバリン”でしたか」

「!!?……な、なんて事…き、君ぃーどういう事だぁ―――!?」


　“ブロバリン”…戦後に、その余りの睡眠自殺に多様されたため、現在では要指示薬に指定されている向精神薬だ。

　どこでそんな知識を得たのか、いつ持ち出したのか分からないが、その、残虐な手口を、時に笑みを浮かべながら淡々ととはなす彼女は、もう私の知っている彼女ではなかった。



「何故だ…何故、突然こんな事を…あんなに君たちを理解してくれたお父さんを!?」

「仕方ないじゃありませんか、あの男がいけないんだから…。フフフ、先生も…もう逃げられないんだから……」

　まるで血が通っていない、冷たい悪魔の様な顔で彼女は言った。

「バ、バカな…一体何があったんだ!?」