-The Real Me-

-動機-

　もはや、ぬけがらの様に硬直したまま動かない少女。

「じゃあ、オレを襲ったのも…」

「おそらく…吉野さん自身に、自発的に薬を飲ませ続けることへの何らかの障害になったからだろう」

　少女の家でこぼしたセリフが浮かんだ。中条はどうして自分が襲われたか、ようやく理解した。

　少女に薬を飲ませるために父親を殺害し、飲ませ続けるために、悩みの元凶であるクラスメートを殺害。

　この数週間、少女の周りで起こった全ての事件は“一人”の女によって作りだされた綿密な殺害計画だった。

　少女にとってそれは全身が切り刻まれる程の、余りに悲痛な現実だった。愛する父を自らの手で殺害してしまった。


「私がこの事実に気付いた時には…もう止められないところまできてしまっていたんだ……」

　憤りを覚える中条だったが、涙を流しながら語る姿に、責める事は出来なかった。