-The Real Me-
-二週間前-


 少女が学校から帰宅したのは夕方5時過ぎだった。いつも通り、寄り道する事もなく、真っ直ぐ家へと歩いていた。

「今日はお父さんが早く帰って来るんだった。フフフ、はぁ~久し振りだなぁ、家族揃ってみんなで夕飯食べるの」


 笑顔で歩く帰り道。しかし、胸を踊らせ家へ着いた少女が見たものは、父の変わり果てた姿だった。

「お、お父さん………きゃぁぁ――――――っ」

 その想像を絶する現実に、少女はただ立ち尽くす事しか出来なかった。

 暗い部屋の中央の電灯に巻かれ、吊されたロープに首をくくり、中に浮いた父の身体。
 それは、とても昨日までの見慣れた父の顔とは思えなかった。

 首から上は紫色に膨れあがり、今にもこぼれ落ちそうな眼球。下半身からは、排泄物が垂れ落ち異臭を放っていた。

 少女はこみ上げてくる胃物の逆流を必死に堪えつつ、およそ自らが体験する事など考えたこともなかった、その対処を行った。


 告別式には、もう何年も会っていない、顔すら思い出せない親戚達が参列していた。しかしその会話は、とても遺族、故人を思い遣る言葉とは言えないものだった。
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