彼の手
その夜、木崎さんから電話がかかってきた。
「もしもし?」
『ごめんね。急に電話して』
「いいえ構いませんけど、どうしたんですか?」
『今日、シャンプーとトリートメントって使ってみた?』
「はい。使わせてもらいましたよ。すごく気に入りました!」
『そう良かった』
「わざわざ感想聞きたくて電話したんですか?」
『……』
木崎さんが黙り込んだ。
「あの…?」
『本当は詩織ちゃんが気になって電話かけたんだ。シャンプーのことは口実』
「えっ?」
『今日、店を出る時泣きそうな顔してたから』
まさか、気付かれていたなんて。
「心配かけてすみません。大丈夫ですから」
『本当に大丈夫?』