彼の手



その夜、木崎さんから電話がかかってきた。


「もしもし?」

『ごめんね。急に電話して』

「いいえ構いませんけど、どうしたんですか?」

『今日、シャンプーとトリートメントって使ってみた?』

「はい。使わせてもらいましたよ。すごく気に入りました!」

『そう良かった』

「わざわざ感想聞きたくて電話したんですか?」

『……』


木崎さんが黙り込んだ。


「あの…?」

『本当は詩織ちゃんが気になって電話かけたんだ。シャンプーのことは口実』

「えっ?」

『今日、店を出る時泣きそうな顔してたから』


まさか、気付かれていたなんて。


「心配かけてすみません。大丈夫ですから」

『本当に大丈夫?』
< 4 / 10 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop