君に触れたくて
二人が付き合い出したと訊いたのは、三浦本人からだった。
あれは、半年前。残業終わりに、珍しく誘われた飲み屋。男二人が来るには、色気がないこの場所で、彼は唐突にきり出した。
“西山と付き合う事になった”と。
何故、俺にわざわざ報告するのだろうと、疑問にすら思っていた。
俺は、いちいち社内の人間関係に、干渉する趣味もない。
例え、それが西山だろうと同じ事だ、俺には関係ないと、思っていた。
「何故俺に言うんだ?」
微かに笑いを含めながら、そう言うと、「部長には、お世話になってますから」と、三浦はビールを一気に飲み干した。