君に触れたくて

「何を言ってるんだ?兎に角、今日は休め。三浦には俺から言っておくから」

慌てて視線を逸らし、戻ろうとドアノブに手をかけた瞬間。

「部長が好きなんです!!」

突然の、背中から受けた思いもしない言葉に、俺の動きはフリーズする。
いや、思考回路も停止寸前。

そんな、俺に構わず、彼女の言葉は更に続く。

「……だから、違うんです。顔が赤いのは、風邪のせいじゃなくて、ぶ、部長のせいって言うか……」

「……」

「私、部長に認められたくて、ずっと頑張ってきたんです。でも、頑張れば頑張る程、なんか上手くいかなくて、結局怒られてばかりで……。仕事がもっと出来るようになれば、部長が私をちゃんと見てくれると思ったから」

「……」

「あ、あの……部長?聞いてます……?」

「聞いてるよ!」

思わず大声が出てしまった。
振り返った俺に、ビックリする彼女の姿が目に飛び込む。

「……いや、西山には三浦がいるだろ?」

そうだ、確かに三浦という、見てくれも良い、仕事も出来て頼りになる男がいる。

本人から聞いた事だ、間違いはない。

それに、普段の二人を見ていれば、疎い俺にだってわかる程、仲睦まじく見えた。

……三浦に、嫉妬心をあおられる程に。




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