君に触れたくて

「それも、違うんです……」


は?


彼女は俯くと、言いにくそうに瞳を揺らす。

「悪いが、意味がわからん」

「三浦先輩は、私が部長を好きで悩んでた時に、相談にのってくれてたんです。部長には、怒られてばかりだし、私の事なんて眼中にないんじゃないかって思ってて……。そうしたら、ある日、三浦先輩が『付き合ってるって事にして、部長の真意を探ってみよう』って」

「お前ら……」

「部長を騙してて、本当にすみませんでした!でも、先輩は全然悪くないんです!私の為に先輩は付き合ってくれただけで……先輩を巻き込んだのは私なんです!だから、先輩を……」

「……ッ!!」

ダン!!

俺は、彼女を壁際に追い詰めると、勢いよく両腕で行き場を塞いだ。

「そんな事はどうでもいい。俺が頭にきたのは、三浦の事ばかり口にするその唇だ」

俺は、何かが弾けたように、感情に任せて彼女のその唇を奪う。

しっとりと濡れた柔らかい唇が、とろけるように俺の唇に交わると、男の本能を刺激させる。

彼女の荒い息遣いが、更に俺を止められなくした。

仕事中、誰もいない静かなこの部屋に、俺達のキスの音と、息遣いだけが満たしている。


「……本当に、その言葉、信じていいんだな?」

吐息混じりにそう訊くと、彼女は、瞳を潤わせ、コクリと小さく頷いて見せた。

「部長の事が好……」

「俺もだ」

そして、気持ちを確かめ合うように、何度も甘く、熱いキスを交わした。

甘くとろける唇が、一つになってなくなる程に。



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