【貴方と本当のキスがしたい。】(*ラブコスメ参加作品)
まるで職権乱用とも言える
IHRAへの入社の誘い。
しかも、藍原さんの専属秘書。
一体どう言うつもりなんだろう?
期待しちゃダメなのに。
諦めるどころか
関わる事を反対する兄を
『課長昇格』の甘い餌で手懐けて
味方につけた。
……私は外堀を埋められたどころか
心まで奪われて逃げられなくなった。
諦める事がますます出来なくなった。
そして、翌年4月
大学を卒業した私は
【IHRA総合産業社】に入社して
藍原統弥専務の専属秘書となった。
スーツ姿にヒールを履き
緊張で固まる私に
口角をあげた彼は
『あっ、それは
俺のプレゼントしたグロスだね。
…合格だよ。』
そう言って、私の瞳をジッと捉えた。
ドキドキと高鳴る私の鼓動に
まるで拍車をかけるように
『…君の唇は本当に健康的だ。
思わずキスしたくなるよ。
……毎日、グロスつけてくるのは
絶対忘れるなよ?
…俺からのプレゼント以外の
ルージュもグロスも、勿論禁止だ。
これは…専務命令だからね。』
彼はそう言って
『…よろしく…水越秘書さん。』
形の良い唇で
まるで悪魔のように囁いて
妖艶な笑みを私に浮かべた。