【貴方と本当のキスがしたい。】(*ラブコスメ参加作品)
藍原専務の専属秘書となって
まもなく1年が経とうとする。
最初は戸惑ったり、失敗もしたけど
彼の補佐をするのは嬉しかった。
秘書になってからも
『…はい、ご褒美だよ。』と
グロスやルージュをプレゼントされて
『…キスしたくなる。』と
揺さぶりをかけるような甘い言葉を
そっと言われてしまうと
私の心は翻弄されて
切なさに胸が痛く、泣きそうになる。
辛い…辛いよ。
秘書としてそばにいられるだけでいい。
憧れのままでもいいとも思ってる。
…だけど、やっぱり私だって女。
好きだから…許されるのなら
専務…貴方とキスがしたい。
私が好きなその唇で
貴方にキスして欲しい。
『貴方が独身だったら…。』と
何度思ったかわからない。
…期待させないで欲しいって
何度思ったかわからない。
でも、私は貴方とキスは出来ない。
一生貴方の彼女にもなれない。
ロビーで堂々とキス出来ちゃうくらい
奥さんを愛してるんだもんね。
私の前で貴方は
家庭の話をした事はないけど
左手薬指に指輪はないけど
既婚者である事実は変わらない。