【貴方と本当のキスがしたい。】(*ラブコスメ参加作品)

その後

「…生憎、名刺を忘れてきたから
申し訳ないが、俺はこの会社に勤める
藍原統弥と言う者だ。
もし、時間があるなら
一緒に昼食でもどうだ?
もう少し色々話を聞かせて欲しい。」

そう言って誘われた私は

一瞬、不審に感じながらも

男性の優しい口元と

柔らかく微笑むとその姿に

悪い人ではないと直感して

誘いに応じた。

そして、社用車に乗せられて

オシャレなイタリアンレストランで

ランチをご馳走になった私は

藍原さんとたくさんの会話をした。

31歳だと言う彼は

大学生の私に比べたら断然大人で

落ち着いた表情をしながらも

時々、優しい笑みを浮かべて

私の話を聞いてくれた。

帰りに近くの駅まで送って貰った時

「…久しぶりだよ。
こんなに楽しい食事だったのは。
…ありがとう。」

彼はそう言って

スーツから手帳を出すと

サラサラと何かを書いて

ビリッと破って私に差し出した。

「……?」

そこに書いてあったのは

携帯番号と、メールアドレスだった。

「…あっ、あの…。」

驚いて私は藍原さんを見た。




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