【貴方と本当のキスがしたい。】(*ラブコスメ参加作品)
こんな素敵な人から
グロスをプレゼントされて
『美紅ちゃん』と呼ばれて
『可愛い』
『キスしたくなる』
なんて言われちゃうと
ますます私は
惹かれてしまいそうになる。
期待してしまいそうになる。
このグロスがもう手放せなくなる。
私はこの人に恋をしてしまっていた。
…惹かれてしまっていた。
その後も私は何度か
藍原さんと食事をした。
その度に
「…新商品だよ。」
と、グロスの他にルージュも頂いた。
嬉しくてニッコリ微笑む私に
「…その笑顔と唇…素敵だよ。
あまり誘惑しないでくれよ。
…キスしたくなるから。」
彼も嬉しそうに微笑んでくれた。
恥ずかしさと共に段々と
『藍原さんにキスされてみたい。』
『彼の唇に触れてみたい。』
『彼の彼女になりたい…。』と
その先を期待するようになってきた。
しかし、数日後。
兄からかかってきた電話により
暗闇へと突き落とされた。
…藍原さんはあの会社社長の次男。
会長の孫でもある、筋金入りの御曹司。
そして…彼は
……既婚者だった。
『彼女になりたい』
『キスしたい』
私の淡い期待は打ち砕かれた。