個人的事情につき“それ”禁止
それ、やめろ
それは偶然乗り合わせたエレベーターの中。
「…お疲れさまです」
「…お疲れ」
後から乗ってきたのは上司でもある私の彼だった。
赤の他人相手だと結構気まずいこの空間も。
彼が相手なら2人きりの甘い空間に早変わり。
…するはずがなかった。
ここは職場なのだから。
几帳面で神経質。
仕事に対して一切の手抜きなし。
“仕事の鬼”と呼ばれ、完璧を貫く彼とつきあうようになったのは、つい最近のこと。
そんな彼がいくら2人きりになったからって。
公私混同するなんてあり得ない。
“好きです…!!”
“…部下にこんな気持ちを抱くのは、上司失格だな”
そんな彼が。
私の一世一代の告白を受けて。
この身を抱き寄せてくれたのだ。
でも、それ以上は何もない。
いくらつきあってまだ間がないとは言え。
お互いにいいオトナなのに、キスすらないなんて。
私だけなのだろうか。
彼に触れたい、と思うのは。
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