個人的事情につき“それ”禁止
彼の指先の感覚に浸って、思わず目を瞑りそうになったとき。
ペシッ、と。
脳天に鈍い痛みを感じた。
「痛っ!!」
「だから、煽るんじゃねぇ」
「煽ってませんよ!!」
「…チッ、たち悪ぃな」
…この人今、舌打ちしました。
職場だってこと、忘れてませんか?
しかもあなた、私の上司ですよ?
「…“それ”禁止」
「え?」
「グロス。もうしてくるな」
そう言って。
自身の唇を指先でなぞる彼の仕草に、背中から腰へと電流が走った。
無駄な色気を撒き散らすのは止めてください…。
そうしているうちに、エレベーターが彼の降りるフロアに着いた。
「なんで禁止なんですか…っ?」
降りていく彼の背中に問いかける。
彼は、振り向かずに答えた。
「…個人的な事情、だ」
【…to be continued…?】