淋しいお月様
「あ、いたいた。星羅ちゃん~、クマさん~」

黄色い声がして、当のユアさんが私たちの席へやってきた。

「前のお客、話長引いちゃってさ~。お昼入るの遅れた」

クマさんは空いている席に置いていた鞄をよけ、ユアちゃんをそこに座らせた。

「お疲れ~」

「もう、リボ払いにしたら、月々の支払い額と手数料はいくらだ、いつになったら完済できるんだ、なんて煩くてさ。いちいち電卓叩いて計算してたよ。はぁ~」

「ご苦労様」

ユアさんは椅子に座るなり、ペットボトルのドリンクを一気飲みした。

「へえ、何、このジュース。初めて見た」

クマさんが、彼女のペットボトルを手にとり、しげしげと見入った。

「コラーゲン入りドリンク」

「ふ~ん。コラーゲンね。味はどうなの?」

「不味い水」

「あははは。でも飲むんだ?」

「うん。もう少しでタクミに会えるから、肌整えておかないと」

でた、“タクミ”だ。

ユアさんのラブの相手。
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