淋しいお月様
私はステージで歌う彼を見た。

セイゴ……セイゴさんだ。

見紛うことのない、あのセイゴさんだったのだ。

えっ。

え~~~っ。

細い肩、しなやかな腕、少し困ったように笑う顔――。

セイゴさんだ――!!

“多久美省吾”って。“省吾”ってショウゴって読むものとばかり思っていたけれど、セイゴって読むんだ。

何だか、タヌキだかキツネだかにつままれたような気分だった。

ポップな曲に、葵ちゃんもユアさんも身体を揺らして、手拍子なんかしてたけれど、私はぼーっと突っ立ったままだった。

信じられないよ。

あれが、あのセイゴさん――!?
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