淋しいお月様
ステージ上で歌う彼は、キラキラしていた。

ちょっとハスキー調の声。けれど、ファルセットは高いところまででて、伸びやかで綺麗だった。

鍵盤の上で踊る指も、まるで魔法のようだった。

まるで、夢を見ているみたいだった。

何日間も会えないでいるセイゴさんが、こんな形で私に会いにくるだなんて。

夢のようだった。ウソだと思った。

人知れず私は頬をつねってみた。

痛かった――夢じゃない。

私はライブが終わるまでの数時間、じっと立ったままずっとセイゴさんを見つめていた。
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