淋しいお月様
家に着くと、小さいお鍋でセイゴさんはホットミルクを作ってくれた。

肌寒い部屋の中、私はタオルケットを身に纏い、セイゴさんとテーブルを向かい合って座った。

狭い部屋の中、セイゴさんは壁に身体を預けている。

私はベッドによりかかっていた。

「こういう雨の日って、落ち着くよね」

セイゴさんがミルクを口につけ、云った。

「私もそう思う」

そういうと会話が途切れ、部屋の中にはザーザーと雨のメロディが流れ込んだ。

私もミルクをひと口、飲んだ。

急に身体があたたまる。

そして、こころ休まる。

「……ねえ、セイゴさんってどういう経緯でミュージシャンになったの?」

ふと気になって、切り出してみた。

「経緯、ねえ……」

苦笑するセイゴさん。
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