淋しいお月様
「あ、仕事のこと聞かれるの、嫌だった?」

「俺のホームページに経歴載ってるよ」

「うち、パソコンないもん」

「そっか」

彼はカップをテーブルの上に置き、脚を伸ばした。

カモシカのような細くて長い脚。

「もともとは、バンドやってたんだ。ボーカル、ギター、ベース、ドラムス、キーボード、5人でね」

「へえ。セイゴさんがボーカル?」

「いいや、キーボードだよ。歌はハモるくらいしかやってなかったよ」

「うん。で、何で今はひとり?」

「ライブハウスで定期的にライブやってたんだ。その時たまたまレコード会社のスカウトマンが来ててさ。それで、デビューしないかって話が来たの」

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