淋しいお月様
「ここ、“うわあ、すご~い”って賞賛するところだよ。はは、“よかったね”か。さっきから淡々としてるね」

「あ、ごめんなさい。何だかセイゴさんがミュージシャンだなんて、未だに信じられなくて」

「まあ、いいさ」

「夢物語聞いてるみたいで」

「うん、いいよ。そんなに興味ないんだろ、俺の仕事に」

「でも、ライブでのセイゴさんはかっこよかったよ」

「はは、ありがとう。ミーハーじゃなくて助かるよ、君」

人差し指を私に向けて、くるくると回す彼。

「音楽に疎くて。テレビもあんまり見ないし……」

「そうか」

そう云ってセイゴさんはミルクカップに手を伸ばし、ごくごくと飲み干した。

ミルクの沈静作用のせいか、私はとろとろと眠くなってきた。

そして、雨音を聞きながら、私はすっと眠りに入ってしまった。
< 138 / 302 >

この作品をシェア

pagetop