淋しいお月様
「え? ベッドまで運んでくれたの?」

うん、とセイゴさんは平然と頷く。

「やだ、恥ずかしい。私、重かったでしょ」

「重くないって」

歯を見せて笑う彼。真珠のような白い歯。

だけど、絶対私、セイゴさんより体重あるはず。

恥ずかしさで一杯になった。

「何を今更恥ずかしがってんの」

「だって……」

「君をおんぶしたこともあったろ」

「ああ、あれは……風邪でふらふらしてたから、恥ずかしいなんて実感なかった」

「じゃあ、今恥ずかしいってことは、元気になった証拠だね」

ふあああ、と彼は伸びをし、そして立ち上がった。

「さ、さてと、夕飯の準備しないと」

「あはは、主婦みたいなこと云ってる」
< 140 / 302 >

この作品をシェア

pagetop