淋しいお月様
アパートの前に停めてあるセイゴさんの車に乗って、私たちはスーパーへ買出しに行った。

ほんとにこれじゃあまるで、同棲カップルだ。

相手は彼氏じゃないのに、何だかるんるん気分だった。

ふたりで食材を選び、ひとつのカゴを持ち、ふたつの買い物袋をふたりいっこずつ持つ。

何だか幸せな気分だった。

ひとりでビール飲みながら、お月様を前に泣いていた自分なんて、今何処だ。

「そうそう、根っこに切り込みを入れて……そうそう」

私たちは、同じキッチンに立っていた。

ロールキャベツを作っているところだ。

「葉っぱの芯の堅いところはね、包丁でこそげ落とすといいよ。うん、そうそう」

「みじん切りは、最初に横に3ミリずつ切り込みを入れて、縦に一気にざく切りする……そうそう、うまいうまい」

「牛乳あったろ。あれを餡に入れるといいよ」

「ああ、ロールキャベツをロールするところで失敗しちゃったんだね。爪楊枝で固定するといいよ」

料理本も開かずに、セイゴさんはアドバイスをくれる。

「……すごいね、セイゴさん」

「何が?」
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