淋しいお月様
「タクミのライブ、よかったでしょ?」

「うん、驚いた」

つい、本音が出てしまった。

「驚くよね~。あんなに綺麗な声してて、細い身体なのに声量あって。ピアノも上手で」

ユアさんはうまく誤解してくれたようだ。

「今度、CD貸してあげるよ。多久美省吾の。どれもこれもいい曲ばかりだから」

「ありがとう」

タクミ、ことセイゴさんのミュージシャン姿は、キラキラしていた。

歌うことが楽しい、って感じで歌ってた。

音楽が好き、って感じで演奏していた。

そんな彼がまぶしかった。

まぶしい太陽。

ステージのライトがまぶしくて、そこに立っているタクミが手に取れないもののように思えた。
< 145 / 302 >

この作品をシェア

pagetop