淋しいお月様
「いらっしゃいませ」

私が若森くんの前のカウンターに立つと、彼は含み笑いをした。

私も自然と笑顔になる。

「店内でお召し上がりですか?」

「いえ、持ち帰りで……」

いつものやりとりだ。

私と若森くんが通じているなんて、他のクルーもお客さんも知らないだろう。

そんな秘密がちょっぴりおもしろかった。

「単品で、ハンバーガーと、チーズバーガーをひとつずつ」

「かしこまりました」

バックヤードに注文を入れる若森くん。

そんな彼の横顔を見ていた。

鼻筋が通っていて、唇はぷっくりとさくらんぼ色。

ちょっとりりしい眉毛なのに、童顔でどこかあどけなさを感じる。

ジュノンボーイに応募したら、そこそこ当てはまるんじゃないだろうか。
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