淋しいお月様
「おまたせ」

「いえ、こちらこそ、お呼びだてしてすみません」

バイト中のような、礼儀正しい受け答えだ。

私は思わず笑ってしまった。

「敬語はいらないよ」

「そう……、じゃあ、今から敬語ナシで」

「うん」

私が席に座ると、若森くんはメニューを差し出してくれた。

彼はすでに、ドリンクバーのコーラを飲んでいた。

「お昼は食べたの?」

「いえ、星羅さんとここで食べようと思って」

「先に食べててもよかったのに」

「でも、悪いから」

そう言ってはにかむ若森くん。

可愛らしい。まるで、子犬みたいだ。
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