淋しいお月様
「僕、地元の大学出て、役者目指して上京したんだよ。何の伝もないのに。ネットで調べて、ここならやれそうと思った劇団のオーディションを受けて、無事受かったけど」

「そうなの……」

ちょっと淋しそうに笑う彼。

「劇団に入っても、何だかもう仲間ができあがってて、入りにくいんだよね。疎外感っていうか。まだまだ入りたてだから、演技もさせてもらえないし、裏方と小間使いばかりだし……あ、愚痴っちゃってごめんなさい」

「ううん。いいの。そっか。そうだったの」

何の伝もなしに上京――。

私と同じじゃないか。

「じゃあ、東京に来て、まだ2ヶ月くらいなんだ」

「そう」

「私も一緒よ」

「そう?」

彼の目が輝いた。

同志を見つけた、といったところか。
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