淋しいお月様
5分ほど歩いて、彼のアパートに着いた。

一階の部屋のドアに鍵をさし、若森くんは“散らかってるけど”と云った。

「私の家も、散らかり放題よ」

そういうと、若森くんは笑った。

「どうぞ」

「お邪魔しま~す」

彼の後に続く。

云うほど、散らかってはいなかった。

ワンルームの部屋は、ベッドとテーブルとオーディオ、テレビがあるだけ。

余計なものは一切ないといった感じだ。

「適当に座って」

「あ、うん。DVD見るのよね。この席でいいかしら」

私はベッドによりかかる形で座った。丁度テレビとの角度がよかったのだ。

「ベッドの上でもいいよ」

「でも……」

「地べただと、お尻痛いでしょ」

そう言って、若森くんはベッドの上に座った。

「ほら」

促されるまま、私もベッドの上に座る。
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