淋しいお月様
「なんだぁ、星羅ちゃん」

家の前までくると、そこには何と、セイゴさんがいたのだった。

私はすがりつきたい思いにかられて、磁石がくっつくようにセイゴさんに抱きついた。

「なんで泣いてるんだよ。どうしたんだよ」

「……っく、っく、え~ん」

子どものように泣きじゃくった。

抱きついた彼の身体は薄っぺらくて頼りなげだったけれど、胸に顔をうずめると自然と精神が安定してきた。

「久々に帰ってきたら、なんだよ。どうした? 言ってみ?」

そういいながら、彼は私のあたまに手をのせ、ゆっくりと撫でてくれた。

「……おかえりなさい」

「そうじゃなくて」

彼は苦笑する。

ひとしきり泣いたあと、私は落ち着きを取り戻し、セイゴさんから離れた。

久々に見るセイゴさんの顔。

なんだか、何十年も会っていなかったような気持ちになった。

それが、やっと会えて、嬉しかった。
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