淋しいお月様
「落ち着いた?」

私はこくん、と頷く。

「何があったか知らないけど、とりあえず、中、入ろ」

セイゴさんの促しで、私たちは部屋の中に入った。

一気に脱力して、私は地べたに、へなへなと座り込んでしまった。

そんな私を見て、セイゴさんは優しく手を握ってくれた。

「今日、仕事は?」

「休み」

「どこ行ってきたの?」

「友だちの家」

「そうなんだ。改めて聞くけど、何で泣いてるの?」

私はコトの顛末をセイゴさんにぽつりぽつりと話した。

セイゴさんの顔がみるみる曇っていく。

怒りではない、哀れみのような、悲しい表情だ。
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