淋しいお月様
「ひとり暮らしの男の家になんて、ふらふら行かないでよ。危ないでしょ」

「……うん」

「でも、どこも無事でよかった……」

そう言って、彼はぎゅっと手を包んでくれた。

「見ず知らずの男のひとを、家にあげるのもダメなの?」

私はイタズラっぽく聞いてみた。

「ダメだよ。そんな危ないこと……星羅ちゃんは、女の子なんだから」

「見ず知らずの男のひとって、あなたのことよ」

「えっ……あ、ああ、そうか。でもあん時は星羅ちゃん、風邪ひいてたから」

「そうね。ありがとう」

「今はもう、見ず知らずじゃないでしょ。僕の仕事とか知ってるわけだし」

そうだった。

セイゴさんは、今をときめくミュージシャンなのだった。
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