淋しいお月様
「いつ帰ってきたの?」

「東京についたのは、今日の朝」

「そうなんだ。最終日はどこだったの?」

「福岡」

「福岡から来たんだ。飛行機で?」

「俺、飛行機苦手でさ。1時間飛行機乗るなら、10時間電車に乗ってた方がいい」

どこかの地ビールの瓶の栓を抜きながら、彼は言う。

私が用意したコップに、なみなみと注いでくれる。

今はまだ夕方に近いお昼なのに、こんな時間から飲んでていいのかしらと思う。

でも、ま、いっか。

セイゴさんの無事帰還を祝して――。

「じゃあ、電車で帰ってきたの?」

「んにゃ、飛行機」

「なによ、それ。あはは」

私たちは笑いあった。
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