淋しいお月様
店員さんにオーダーすると、女の若い店員さんは頬を染めて、セイゴさんをちらちらと見ていた。

「以上でご注文はよろしいでしょうか」

私にではなく、セイゴさんに言っている。

「はい。お願いします」

「あの……、多久美さんですよね」

おずおずと若い店員さんは彼に話しかける。

「あ、はい」

彼はにこやかな笑顔をつくって見せた。

「握手……してもらってもいいですか」

「いいですよ」

そう言って、セイゴさんはおしぼりで手を拭き、女の子と握手をした。

店員さんの顔が、みるみる赤くなる。

「ありがとうございます。プライベートなのに、失礼しました」

そう言って、私をちらっと見て、彼女は行ってしまった。

あ~、彼女とか、そういうんじゃないので……。

弁解する暇もなかったけど、セイゴさんには立川絵里という歴とした彼女がいるのだ。

私のことなど、ただの友だち程度にしか見られてないだろう。
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