淋しいお月様
「……おいしい」

「でしょ?」

しばらく待って出てきたピザは、熱々とろ~りで、もっちりした食感だった。

セイゴさんは得意気に笑う。

運ばれてきたお水も、ほんのりレモンの味がして、ミントまで添えてあった。

「素敵なお店ね」

「うん。たまに来るんだ。食べたくなって」

それは、立川絵里と? ――とは、聞けずにいた。

セイゴさんが誰と来ようが、私には関係ない。

「よかった。ちょっとは元気になった?」

お水を口に含みながら、セイゴさんは首を傾げて尋ねてきた。

「あ、うん……ありがと」

「あはは、星羅ちゃん、口許にチーズついてる」

彼はそう言うと、身を乗り出して私の口許をおしぼりで拭ってくれた。

――どきっ。

顔が近い……唇が、近い――。

胸に電流が走ったようだった。

……あれ?
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