淋しいお月様
そうだ。

それに、セイゴさんには、立川絵里という、清楚で可憐な彼女がいるのだ。

――いつも、私といるから、そんなこと忘れちゃってたよ……。

セイゴさんにどきっとしたのは、免疫が薄れているから。

恋愛に対して、フォーカスが合っていなかったから。

そう、こころのきまぐれ。

私は、そう思うことにした。

帰りの車の中でも、妙にどきどきしてしまった。

セイゴさんの手が、ギアに伸びる度、私に手を伸ばしたのかと思って、どきりとした。

でも、自制はしている。

こんなの、ただの気まぐれの感情に過ぎない。

「どうしたの? ずっと黙って」

鋭いセイゴさんの突っ込みが入る。

「だって……えっと……」

「ん?」

赤信号で車は止まる。

セイゴさんが、私の顔を覗きこむ。

どきん!

また、私のハートは跳ねてしまう。
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