淋しいお月様
ダメだ……。

これじゃあ、ダメだ。

「あの、えっと……」

「何か様子おかしいね。また風邪でもひいた?」

そう言って、私のおでこに手をあててくれる。

もう、心臓バクバク。

今までずっと、何で平静でいられたのだろう。

どうして急に、恋愛のスイッチ入っちゃったんだろう。

私には、静哉がいるのに……。

「風邪、では、……ないです」

「おかしい」

「うん。でも、大丈夫だから、ほっといて。ほら、信号青」

セイゴさんは、慌てて車を出す。

さっきから緊張しちゃって、気持ち悪いくらいだ。

本当に……吐きそう……。

「ごめん、セイゴさん。どっか、トイレ……」

私は口許を押さえる。
< 203 / 302 >

この作品をシェア

pagetop