淋しいお月様
セイゴさんは、今夜も家に泊まるのだろうか。

私たちの関係って、何なんだろ……。

友だち以上、恋人未満ってやつ?

だけど、セイゴさんには立川絵里がいて。

私と密会してるだなんて、浮気にならないのかしら。

謎だ。

でも、一緒にいるのが楽しいから……いいか。

「今日はリゾットにしようか」

私のこころの内など知らずに、セイゴさんは言う。

「えっ。そんなの作れるの?」

「簡単だよ~。ただ、野菜切って煮込むだけだから」

「尊敬~」

今までの関係を壊したくないから、私は平静を装うことにした。

「……あ」

突然セイゴさんが声をあげた。

「な、なに?」

「いいメロディ思いついた。ちょっとレコるね」

彼はボイスレコーダーを手にし、メロディを口ずさんだ。

「ららら~らら、らら~」

相変わらず、澄んだ歌声。

この声にやられるんだな。

ファンも、私も。
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