淋しいお月様
運転しながら歌っている彼の横顔を、ちらりと覗き見た。

やっぱり、素敵だ。

なんだか、セイゴさんが煌めいて見える。

やせっぽっちの、もやしっ子なのに、どこか頼もしい。

「何? じっと見て」

横顔を向けたまま、彼は言う。

「あ、いや……」

口ごもってしまう私。

セイゴさんも、それ以上は追及してこなかった。

私たちはスーパーで降り、夕食の材料を買った。

まるで新婚夫婦? なんてうかれている私の気持ちを、セイゴさんは知らずにいた。

どきどきしたり、気持ち悪くなったり、うかれたり、乙女ゴコロはフクザツだ。
< 207 / 302 >

この作品をシェア

pagetop