淋しいお月様
セイゴさんには、立川絵里がいるのに――。

彼女がいるのに、何で私の傍にいるのだろう。

これって、私、浮気相手ってことになるのかな?

そんな考えが、あたまの中を過ぎって、私は思わず口に出してしまっていた。

「……ね、セイゴさんって、彼女いないの?」

彼は私の発言に、モーションを止めた。

驚いたように、私を見つめる。

「君は……あんまり芸能詳しくないんだっけ。知らないのも当たり前かな」

立川絵里のことを言っているのだろう。

彼女のことを知っているということは、きっとセイゴさんは知らない。

「じゃ、いるんだ」

「いるというか……。そのうち話すよ」

私のこころはざわざわと騒ぎ出す。

否定しない――やっぱり、ユアさんたちが言うように、セイゴさんには、立川絵里の影が……。

私はしゅんとしてしまった。

この、セイゴさんの優しさは、きっと気まぐれなのだろう。

私は、彼女第二号なのだろう。

彼女でもないけどさ。

だけど、立川絵里と会う時間なんて、あるの?

私たち、いつも一緒じゃない。
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