淋しいお月様
聞きたいことは、山ほどあった。

けれど、そこはセーブした。

これ以上、傷つきたくないし、セイゴさんが離れていってしまうのは悲しい。

事実を知らなくても、そばに彼がいるだけで、それだけで私は十分だった。

――自分のことを、棚に上げてる場合じゃないよね。

私にだって、音信不通だけど、静哉という彼氏がいるんだから。

別れ話だって、していない。

もしかしたら、本当に忙しくしてて、私になぞ構ってられない状況にあるのかもしれないし。

あんまりにも会えないから、静哉に対する感情、忘れそうだよ。

それとも、会えなかった分、会えた時に感情爆発するかな。

「――セイゴさんは、あんまり私のこと聞かないね」

ワインに酔ってか、私はさっきからダイタン発言をしている。

「ん。俺ってチキンだから。あんまり星羅ちゃんの過去のこととか、聞きたくない。少なからず、ショック受けるだろうから」

ショック? それはどういう意味ですか?

「上京してきた理由も?」

「何となく解るよ。だけど、はっきりとは聞きたくない」

「どうして?」

「どうして、だろう、ねえ」

彼は言葉をはぐらかす。
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