淋しいお月様
一緒にいるのに、恋人ではない。

一緒にいるのに、そういう行為はない。

私は、セイゴさんに魅かれつつある。

セイゴさんは……?

私をどう思っているのだろう。

放っておけない、おのぼりさん?

世話の焼ける妹?

でも、なんでもいいや。

美味しい料理に美味しいお酒、楽しいセイゴさんとの生活。

これだけで、十分幸せ。

セイゴさんに彼女がいようとも、私は目の前にいる彼だけを信じればいい。

「セイゴさん、これからしばらくオフなの?」

「そうだよ。まあ、ぼちぼち曲作りもしなきゃならないけどね」

「今日もレコーダーで作曲してたよね」

「作曲というか……まあ、曲のキッカケね」

「詩も書くんでしょう?」

「うん。でも、俺、書こうと思って書けないんだ。家の中だと無理。夜中のファミレスとかでガリガリ書いてるよ」

仕事の話になると、目が輝きだす彼。

素敵だと思う。

私はそこまで、自分の仕事に誇りを持てない。
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