淋しいお月様
「おかえり、星羅ちゃん」

「わ~、いい匂い」

家へ帰ると、セイゴさんがご飯を作って待っててくれた。

キッチンに立っているセイゴさんに近づく。

う……、やばい。

このまま、抱きつきたい衝動に駆られる。

「きょ、今日のメニューは何?」

「さんまの甘露煮」

「美味しそう。あ、お弁当も美味しかったよ。ありがとうね」

「あ、お弁当箱出しといて。洗っておくから」

「すみません……」

家事のほとんどをやってくれているセイゴさん。

相変わらず私は片付けも苦手で、私がいない間に掃除機までかけてくれる。

これじゃあ、セイゴさんはミュージシャンなんかじゃなくて、主夫みたいだ。

そうさせているのは私だけど。

もっと家庭的にならなきゃ、セイゴさんに嫌われちゃうかな。

でも、ぐうたらな私でも、こうして傍にいてくれるってのは、このままでもいいのかなって甘えてしまう。
< 218 / 302 >

この作品をシェア

pagetop