淋しいお月様
「? 星羅ちゃん?」

「ああ、はい。ごめん。いいよ。番号。どぞ」

たどたどしい返事になってしまった。

「うん」

私の携帯に、新しい命が宿る。

多久美省吾という、素敵な息吹。

これで、24時間、いつでもセイゴさんと繋がれる。

いつでも、飛んできてくれる。

「赤外線、飛んだ?」

「うん。来た」

私たちはおでことおでこをくっつけそうな距離で、携帯を操作していた。

そのことに気がついて、私は胸がドギマギしてしまった。

ふ、と見ると、セイゴさんの瞳は、私をじっと見ていた。

あ……。

「……だめ……」

セイゴさんは私の頬に手を当て、キスようとした。

私は思わず、拒んでしまった。

すると、セイゴさんは我に返って、

「あ、ごめん。ダメだよね、ごめん」

と、苦笑いした。

ダメじゃないの。

私だって、セイゴさんとキスしたいの。
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