淋しいお月様
「ニュース! ニュース!」

朝、職場へ行くなり、職場のエレベーターを待つ一階でユアさんが駆け寄ってきた。

「な……なに?」

その興奮ぶりに、私は身をひいてしまった。

周りのエレベーターを待つ列のひとたちも、その声の大きさにびっくりしてこちらを見ている。

ユアさんの手には、何やら週刊誌。

「タクミ、二股疑惑!」

そう言って、ばっと週刊誌を広げてみせた。

【多久美省吾、一般女性とお買い物デート! 立川絵里と二股か!?】

そんな一面が、目の前には広げられている。

ん、んん?

これ……私じゃん。

この間のドライブで行った、ピザ屋で向かい合って、私の口許についたピザをおしぼりで拭いてくれているシーン。

それから、スーパーで夕食の買出しをしているシーン。

どちらも仲睦まげ。

私の顔にはモザイクがかかってるから、バレたりはしないだろうけど……。

「ちょっと見せて」

私は彼女から雑誌を奪った。
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