淋しいお月様
「飲もうぜ」

静哉はそう言うと、さっき一緒にコンビニで買ってきたビールを取り出す。

私にも一本、取り出してくれた。

「ありがとう」

「乾杯」

「乾杯」

私たちはべん、と缶を合わせた。

私はひと口ビールを飲むと、言った。

「でも嬉しい。静哉とはもう会えないと思ってたから」

ちらり、と静哉は私に視線を寄こす。

「びっくりしたよ。多久美省吾とオマエが、一緒に週刊誌に乗ってるんだもん」

「ああ、よく気づいてくれたね、私だって」

「まあ、つきあいも長いだろ、俺たち」

「そうね」

「タクミとは、どういう関係?」

おもむろに静哉は聞いてくる。

「別に。ただの友だちだよ」

“友だちだったよ”の方が正解かもしれない。

だってもう、私たちは会えないのだから。
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